人中短縮とは?
人中とは鼻の下の部分を呼びます。
正確には鼻の中心にある鼻柱と上唇との間の溝のことを指します。この人中は口輪筋と呼ばれる口をすぼめたり、閉じたりする筋肉と鼻下の皮膚とによって成り立っています。人中が長いと鼻下のみならず、中顔面(目と口との間の部分)が間延びして見えることとなってしまい、老けて見えてしまう傾向があります。
人中短縮とは人中を切除して縫縮することで中顔面を短くみせて若々しい印象に近づける手術です。
人中短縮は創部が目立ちやすい?
一般的に真皮の厚い部分を切開すると創部は目立つ傾向があります。
例えば目元などは真皮が薄く、全切開や眉下切開の創部は時間がたてばかなり目立たない創部となりやすいです。
人中の真皮は顔の中では比較的厚みがあるので醜状瘢痕となりやすい部位であると言えます。
醜状瘢痕や肥厚性瘢痕になる要素としましては ①体質 ②戻ろうとする力 があると考えています。
①については内服薬や塗り薬を当院で施術をうけていただいた皆様にアフターフォローとしてお渡ししています。
②については手技が重要です。
人中を切除した後に皮膚と皮膚を縫合しただけの場合は戻ろうとする力に負けてしまい、人中短縮の創部が数ヶ月かけて次第に太くなってしまいます。
人中短縮では控えめな方で3mm、しっかり切除する方で5mmという数ミリがとても効果の印象に大きな影響を与える世界ですので創部が数ミリ伸びただけでも効果に大きな問題が生じますし醜状瘢痕となります。
効果も感じず、太い創部だけが残って後悔しているという方がとても多いのが人中短縮の施術になります。
これを回避するためには口輪筋という鼻下にある厚みのある筋肉を鼻中隔軟骨周囲の硬い組織や上顎骨前鼻棘骨膜といった硬い組織につり上げ固定することにより、皮膚にかかってしまう戻ろうとする力を抑制しています。
このことによって創部の厚みを1mm以下に抑えて効果を維持しています。
ただそれでも中には醜状瘢痕となるケースはございます。
①の体質の問題があるからです。
その場合でも人中短縮の創部を鼻孔の中に隠して不連続な創部とすることにより人中短縮の創部自体をぱっと見で認識できないようにすることでリスクを2重に抑えています。
人中短縮でよく挙げられる懸念事項
●人中短縮で上唇がめくれてしまうか?
人中とは鼻柱と上唇との間のことを指します。
したがって人中短縮とは鼻柱を下げるか、上唇を引き上げるか、もしくはその両方を組み合わせるかということになります。
人中短縮時に鼻柱は皮下組織や口輪筋から完全に剥離して可動性を確保しています。
鼻柱の下降具合はコントロールすることができます。
したがって上唇がめくれたくない方の場合は鼻柱を引き下げてめくれかたを抑えています。
反対に薄い上唇で厚みを出したいという方の場合は鼻柱をあまり下げずに上唇の厚みを出すように鼻柱の位置をコントロールしています。
またこのときに上唇中央部だけがあがってしまっては富士山型となってしまい、バランスが悪いため鼻翼まわりも切開を行い、梨状口付近の骨膜を用いて上唇外側部の口輪筋のつり上げも併用しています。
●人中短縮で鼻の穴は大きくなるか?
前述の通り、当院では体質のために人中短縮の創部が仮に醜状瘢痕となった場合でも目立たないために鼻の穴の中に人中短縮の創部を隠して不連続に見せるという術式をとっています。
そのために鼻孔底隆起と呼ばれる部分はなくなってしまいます。元々鼻孔底隆起がない方もいるので機能的な問題にはなりません。
鼻孔底隆起がなくなることで鼻柱を上下に動かしても鼻の穴の縦幅に大きな影響は見られず鼻柱を下げた場合は鼻孔縁も一緒に下がってくることで鼻孔の縦幅は小さくなります。
鼻孔底隆起を残した人中短縮で鼻柱を下げてしまうと鼻孔底隆起も同時にさがります。こうなると鼻孔の縦幅はとても大きくなってしまい、目立ってしまいます。
鼻柱が下げられないため、鼻孔底隆起下での切開での人中短縮の場合は元々上唇が厚い方に行うことがバランス上、非常に難しくなります。
鼻柱が下げられないのであれば上唇をめくれさせるしかないからです。
鼻孔の縦幅については以上ですが横幅にも問題があります。
一般的に人中短縮を小鼻の横まで切開した状態で行うと鼻翼は外に広がる傾向があります。
小鼻の横を切開しなければ広がりませんがそうなると上唇の中央部のみ厚くなる富士山変形を起こしやすいのでおすすめしておりません。
鼻翼が横に広がると言っても1mmずつ程度なので小鼻がもともと大きくない方は気にならない場合も多いので人中短縮のみでよいですが、
小鼻の張り出しが強い方やもともと目がよっていて相対的に鼻が大きく見えやすい方などは鼻翼縮小を併用して小鼻の広がりを抑えておいた方がバランスはよくなります。
●人中短縮でガミースマイルは悪化するか?
当院では人中短縮の創部のリスクを下げるために口輪筋を前鼻棘に固定しております。
ガミースマイルを気にされているケースでは上唇の移動を抑えるために鼻柱を下降させます。
このときに前鼻棘のやや口側の骨膜に固定することで鼻柱を下げることができ、この処理で口腔前庭をせまくすることができます。
ガミースマイルになるリスクを下げることができます。
ただ上顎骨が前突していたり長かったりするいわゆる『クチゴボ』と呼ばれるケースでガミースマイルが起きている場合は、そもそも論として口が閉じにくいために鼻下の皮膚を伸ばして生活する上で人中が伸びているという流れになるのでこれを切除してしまうとガミースマイル以前に笑わないときまで口が閉じないということが生じてしまうため、先に骨切りの施術をおすすめしております。
●人中短縮で口角は下がってしまうか?
人中短縮時に鼻柱を下げる場合は上唇の移動は少なくなるため、上唇の厚みがあまり増えません。
よって口角の下がりは自覚しないケースが多いです。
ただ鼻柱が元々下がっているケースでこれ以上下げるとバランスが悪化するが人中は短くしたいというご希望の方の場合は、上唇をめくれさせることになります。
口よりも鼻の方が大きい方は一般的に少数なのでたいていは鼻にそった人中短縮の切開を行うと上唇の内側7割ほどの厚みが増して口角が相対的に下がって見えます。
ほうれい線まで伸びた切開線を許容していただけるならこの問題は起きませんがそうでない場合は口角を挙上させたり、外側人中短縮を併用したりすることで口まわりのバランスを整えています。
●Cカールはできるか?
Cカールができるかどうかは口輪筋の力に依存していると考えています。
若年者で口輪筋がしっかりしていてたるみが少ないケースでは鼻柱付近の皮下組織をしっかり切除して口輪筋を前鼻棘に固定することで人中が外反してCカールが強調されます。
この処理を行わずに皮膚だけを縫合してしまうと皮下組織が重なってしまい、猿顔になってしまいますので必要な処理です。
しかし中年以降で口輪筋が伸びてしまい、上唇が内反しているケースでは猿顔化は防げても外反を起こすことは難しい場合が多いです。
この場合は上唇を前突させるようにヒアルロン酸注入を併用した方が安全にCカールを形成しやすいです。
●鼻柱がすでにおりていて上唇も厚くしたくない場合はどうする?
一般的に鼻柱が鼻に埋もれていて鼻翼が下垂しているような方は上唇の厚みがあるケースが多く、鼻柱がおりているケースでは上唇が薄い方が多いです。
したがってあまり選択に悩むケースは少ないですが鼻柱がおりていて上唇がうすいけれどもあまり上唇の厚みは変えたくないという方もいらっしゃいます。
そういった場合は口唇縮小を併用して上唇の厚みを変えずに人中を短縮させています。
当院の人中短縮について例を挙げながら説明させていただきました。
最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。
同じ人中短縮でも患者様の状態となりたいご希望によって施術のやり方や組み合わせ方は様々になってくるかと思いますのでカウンセリングにて詳細は説明させていただければ幸いです。